元幼稚園を工場へ、工場移転への想い

Products Story

ナイスコーポレーションは長い間、仕事場にしていた工場を2026年、1月に移転しました。今後の事業的なヴィジョンを改めて見つめ直したとき、手狭に感じる作業スペースを解消し、キャパシティを確保し、従業員の働く場所を整える必要がある、と強く感じたことが大きなきっかけです。ともに働く人社員が笑顔で働ける場を作ること、そして、作業効率が上がる環境づくり、移転することで期待できる地域との関連性について井筒伊久磨にインタビューしました。

 


 

本社工場は元幼稚園の建物ということですが、このような場所を選んだ理由を教えてください。
 


私たちは岡山県倉敷市児島(こじま)という国産ジーンズ発祥の地にて「Made in Kojima」の歴史に基づく熟練の職人技術、そして、次世代のメンバーならではの視点を兼ね備えた会社であり続けたい、という想いがあります。そうした考えを携え、よりよいものづくりを追求するためには、地域に根付いた“文化的な背景を持つ場所”に工場を持つことが重要だと考えました。この建物に出会ったのは1年半ほど前のこと。元幼稚園という場所は、この土地で沢山の人が関わってきた思い出の痕跡があり、郷愁を誘うような温かみを感じさせてくれる場所だと感じています。既存建物をリノベーションすることは新築に比べてCO2排出量や廃棄物を大幅に削減することができます。そうした側面は、B Corpの環境配慮のポイントにも則しています。こうした物件にタイミング良く運命的に出会えたのは、自分たちの財産だと思います。



こちらの工場で一番気に入っているポイントを教えてください。



窓が多くて、風の通りがすごくいいんです。そして、近くには鴻八幡宮(こうはちまんぐう)があります。ちなみに例大祭は、岡山県指定重要無形民俗文化財になっていて。例大祭は10月の第2日曜日とその前日に斎行され、だんじりと1台の千歳楽が長さ80mの表参道の坂を駆け上がります。岡山三大だんじり祭りに数えられ、たくさんの人が訪れます。社員とともに、地域の風土や文化的なことに触れることができそうで。そうしたことがこれからの楽しみですね。

今後、どのような工場にしていきたいか。展望を教えてください。

 

自分が代表になり、工場移転までは5年という時間が存在しました。その間に日々、自問自答を繰り返してきて、ずっと同じことをやり続けているだけではこの先、業界の中で生き残れないという危機感がありました。だからこそ、変化し続けなければならない。それで、元幼稚園という文化的な場所を工場にすることを決めました。こうした選択には責任が伴います。自分たちの仕事に誇りが持てるようなよりクオリティの高いものづくりを続けて、国内外のクリエイションを支え続けたい。そうした意欲が高まっています。

また、地域の人たちを呼んで、イベントを開催したいと思っています。たとえば、染色会社に協力してもらって、デニムの染色をするワークショップを行ったり、フリーマーケットを開催したり。そうすることで、地域の人たちとの“交流の場”を作りたいと考えています。また、近くに親交のある工場がいくつかあるので、彼らと連帯してイベントを計画してみたいと思います。たとえば、ものづくりの現場を開放する「工場見学」を同時期に開催して、スタンプラリー的に楽しめるようにするなど。イベント時は飲食店に協力してもらい、キッチンカーを出してもらったりすると、地産地消の食材を味わえたりして、楽しくなると思うんです。そんなことを考えているとワクワクしますね。

以前の工場よりもスペースが広くなり、より生産がしやすくなるというメリットもあります。「会議室 / Meeting Lounge」という名の企画室兼ラウンジを作る予定です。その空間をショールーム的な場所にしたい、と考えていて。よりリラックスしながら企画を考えることができるのは、とてもいいことだと思っています。そして、元遊戯室だった「ホール」という広々とした空間があるのですが、ここには、キッチンカウンターを作ります。自分たちで食事を作って食べるといった、健康的な営みを仕事の時間の流れに組み込みたいと考えています。加えて、子どもがいる社員が、子どもを連れてきて遊ばせる空間も用意したいです。ものづくりをする「工場」であることは間違いないけれども、日々の生活に彩りや安心感が生まれる、豊かな場所にしていきたいという想いがあります。それでいて、異業種とのコラボレーションや新たなクリエイションが生まれるような、どこかアトリエ的な要素や可能性を含んだ空間を目指したいな、と。

新しい取り組みのひとつとして、私たちは「NC PRODUCTS」としてクッションカバーやラグなどライフスタイルプロダクツを作っています。「パッチワークライン」と言って、製造過程で生まれる残反に着目したものです。デニムには多様な表情があり、ほかの服地より強度が優れているという特性があります。また、残反という特性から、その時々で扱う素材や色が異なります。これらをパッチワークで繋ぎ、縫製技術を応用する面白さがあると思います。

さらに、今後はコラボレーションなどで、難易度の高い複雑なデザインにも挑戦していきたいです。工場内には、ショップスペースを作り「NC PRODUCTS」や私たちがセレクトした地元の良いプロダクトを販売したいと思っています。実際に、手にとって、触れてみてもらえる場があることでより、私たちのものづくりを身近に感じてもらえると思うんです。そして、今後は一歩踏み込んで、ファッションだけではなくインテリアや建築業界など、ジャンルを超えた協業を生み出せる工場でありたいと願っています。



社員の方に「工場移転」に関して、率直な意見をお尋ねしてみたいと思います。社員を代表して生産管理の林奈々代さんに話を聞きました。

 

まず、元幼稚園という場所を工場にするという話を聞いたときにとても驚きました。窓がたくさんあるから、日当たりがすごく良いのがとても魅力的。以前の工場でも暗い中で作業しているわけではないですが、太陽の光をいっぱい浴びながら作業できるのは、気持ちの面でだいぶ違うのではないかと思います。私はほかの工場で作業したことはありませんが、新しい工場はひとりになれそうな空間がたくさんありそうなところも気に入っています。広い空間の中で落ち着いて一人でいられる場所がある仕事場はとても理想的。縫い場、商談の場など、空間がきちんと仕切られていながら、それぞれが何をしているのかが可視化しやすい。それは、互いに今、どんな仕事に取り組んでいるかを知る意味でも良いと思います。工場移転は心機一転、“新しい風”がたくさん吹く場所になりそうで楽しみです。

続いて、長年勤続している松本由比子さんさんに話を聞きました。



新しい取り組みにワクワクします。元幼稚園という場所を工場にするということで、交流の場になりそうなのが嬉しい。私はこれまで仕事中心の生活をしてきたので、この場所を通じて新たな出会いに恵まれたら嬉しいです。広い空間になり、休憩時間と労働時間のメリハリが持てるのも良さそうです。グラウンドのベンチに腰掛けて羽を伸ばすのもいいな、と。私たちの会社は、朝一番に皆でラジオ体操をしているのですが、新しい環境ではより伸び伸びとできそうでいいな、と思います。
 

文 : 矢島聖佳

写真 : Shin Hamada

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