GOTS認証取得までの道のりと、その先

Products Story

GOTS認証は「Global Organic Textile Standard」の略称で「ゴッツ」と読みます。コットンをはじめウール、麻、絹などの原料が製品として「正しくオーガニックである」ことを保証する世界的な認証基準のこと。GOTS認証を受けた製品は、原料の70%以上がオーガニック。さらに、加工・製造・流通のすべての工程において、環境的かつ社会的に配慮した方法が実行され、有害な化学物質の使用制限、労働者の人権保護などをクリアし、トレーサビリティ(追跡可能性)が確保されていることを示しており、製品に貼られているロゴマークが目印になっています。ナイスコーポレーション代表、井筒伊久磨へのインタビューで、GOTS認証取得を目指した背景、取得後の現状をお届けします。

 


 

「ナイスコーポレーション」は2025年5月にGOTS認証を取得しましたが、ここに至るまでの背景をお伺いできたら。


GOTSは、アパレルに特化した国際認証の中でも信頼性と認知度が高く、「人権・環境対応」を証明する代名詞としてグローバルに受け入れられています。ナイスコーポレーションは、従業員の人権を守り、環境・社会に配慮したものづくりを行うことの表明としてGOTS認証を取得しました。
元々は海外の方から「GOTS認証を取得しないの?」という呼びかけがありました。それがきっかけで意識するように。そうした声を頂くまでは、取得する予定はありませんでした。実際B Corp(Bコープ)と同じくらいに時間と手間がかかる認証なのかどうかを調べました。それで、B Corpをすでに取得している僕らは、すでに環境が十分に整っているということがわかりました。それで、2024年の年末に取り組もう、と決めて2025年の年明けからスタートしました。監査を待つ期間が1カ月くらいありましたが、それを含めて取得まで2カ月くらいかかりましたね。GOTSが日本国内での監査・認証業務を依頼している主な認定機関(第三者認証機関)に「エコサート・ジャパン」や「コントロール・ユニオン・ジャパン」などがあります。僕らは、「エコサート・ジャパン」に依頼しました。


GOTS認証を取得されたことで取引先が拡大したなど、好例はありますか?


現状ではまだありませんが、GOTSやB Corpなどグローバルで必要なことへの取り組みは、今後もチャレンジして行きたいです。
GOTS認証を取得したことで商談のシーンが増えていくのかもしれない、と想像を膨らましていましたが、アピールできる企業はまだごく僅か、という印象です。一方で、今はB Corpを取得しているアパレル企業としての立ち位置でインタビューを受けたり、パネリストとして参加を求められたりすることが増えました。月に1回は問い合わせをいただくような動きもあります。僕らが拠点を置いている岡山県倉敷市児島(こじま)でも「B Corpを取得したい」と声を上げる企業が出てきました。そうした人たちに選択肢の一つとしてGOTS認証の価値観から伝えていくことも自分の役割だと思っています。
 


GOTS認証を取得するために、工場の環境整備や環境への配慮として心がけたことを教えてください。

 

ゴミの分別や再生エネルギーの利用など、環境面において徹底しています。また、ものづくりの面における環境への配慮へも新たな一歩を踏み出しました。デニムの端材を使い、製紙会社とコラボレーションしてオリジナルの紙をこしらえ、メモ帳を作ったことが新たな取り組みです。アパレル製品を製造する企業としては、どうしてもエネルギーを消費する側の立場になってしまいます。それでも、企業のステートメントとして発信できるプロダクトを「NC PRODUCTS」というブランドで作ることができたら、と思っています。ゴミを出さずにアップサイクルするというアプローチは、これからもさまざまな角度から模索していきたいです。
 

30年後を見据えて「若い世代に技術を繋いでいきたい」という想いがお有りだと伺いました。近い未来、ひいては30年後にイメージしているヴィジョンを教えてください。


ファッションのサイクルは20年単位で変わるもの。そうした流れを踏まえて、今、改めてデニムが世界から注目されているという事実があります。僕らの世代よりももうひと回り下の世代に伝えていくことを踏まえると、30年後をイメージしながらデニムの素晴らしさや技術を伝えていきたいという思いがあります。そのためには、GOTS認証を取得するなど、企業価値を上げられる前向きな取り組みは必要不可欠です。

法定最低賃金が上がったり、物価の高騰があったり、日々、状況が移り変わっていくなかで製造現場である工場の労働環境を整え、ブラッシュアップする企業姿勢を見せていかないと工場の存続も正直、厳しくなっていくと思います。従業員の賃上げや安定的な休日の確保などは常に課題になりますが、そうした事柄と正面から向き合い続けることができる体力が必要になってくる。

そのために僕らの会社が先陣を切って、B CorpやGOTS認証に挑戦しているということです。それに伴い、技術を継承するための「スキル形成テスト」を作りました。これにいわゆるメンター制度を紐づけることで、社員同士、1対1のマンツーマンで技術を身につけていってくれたらと思っています。これまでは、先輩の「背中を見て学ぶ」という世界がまかり通っていましたが、きちんと制度化することで技術を明文化したいと強く思いました。今はありがたいことに「教えられる技術者」が育ち、うまく循環できるような体制が整いました。そうした新たな取り組みを発案し、できるだけ柔軟に企業形成ができたらいいな、と思っています。加えて、同じ志を持った国内外の方々と繋がり、共にものづくりを続けることで、業界自体の持続可能なあり方を模索していけたら、と。また、身近な同業者同士が互いに相談できる環境を作っていきたいと考えています。日常的な対話を通して、“切磋琢磨できる仲間”を増やしたい。そんなイメージがありますね。

GOTS認証を取得したことで社員の方の意識に変化が訪れた部分はありますか?

 

新規で入社する人たちは「認証を持っている企業」という認識がある人が大半。そうした部分に共感してくれる人が増えている印象です。生徒を企業に送り出す学校の先生たちは、B CorpやGOTS認証を取得している会社というポイントで評価してくださっていて。「安心して生徒を送り出せる」とお声をいただくことも増えました。僕らの将来性に期待してくれるのは嬉しいことです。これからの活動への励みになっています。


文 : 矢島聖佳

写真 : 北村 穣 (Rudesign / GO motion)

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